ワヤン・テリー(寺村重喜)のバリ島叙情

[009]霊験あらたかな子造りの神々。


ウブドの中心部に長く留まりすぎたかもしれない。これから周辺に徐々に足を伸ばしていこう。
まず向かうのは南東へ3kmほど行くとゴア・ガジャだ。ここを訪れた人はほとんどがウブドの中にあると思っているくらいに近い。中心街で自転車をレンタルして走ってきても15分もかからない。このゴア・ガジャから北のペジェン村にかけては11世紀から14世紀のバリ初期のペジェン王朝が栄えた地で、古代遺跡や歴史ある寺院が点在している。
 
ゴア・ガジャは象の洞窟という意味をもつが、バリには棲息していない象を象徴した遺跡ではない。オランダが14世紀に発見したボマ像がはじめ象に見えたことに由来する。そして1923年、魔女カーラの顔が彫られた洞窟が発見された。11世紀の頃、ヒンドゥーの行者が断食や瞑想のための隠遁所として建立した寺院跡である。洞窟の中は広いのかと思いきや意外と狭く、入口を入るとすぐに突き当たり。右側にはリンガ像が3体祀られ、シヴァ神、ヴィシュヌ神、ブラフマ神だという。左側にガネーシャ像が安置されている。このガネーシャ(象の神像)がゴア・ガジャの名の由来だとする説が有力だが、私は少数派のボマが奇妙な象に見えた方を摂る。その方がなんだかロマンを感じるから。そして、この遺跡はタンパクシリンにあるグヌン・カウィと同じく伝説の巨人クボ・イワが指の爪で彫り込んだもの、といういわれがある。ますますロマンチックではないか。この洞窟の前には1954年になって発見された沐浴場があり、6人の女神がもつ壺から聖水が流れ落ちている。美しい女神像だ。また、ハクティ神の彫像も祀られている。ハクティ神は日本で言うと鬼子母神だが、バリでは子宝の神として崇められ、新婚夫婦やしばらく経っても子供に恵まれない夫婦がよく参詣に訪れている。

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寺村重喜
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