[010]想像力をかき立てる遺跡の彫刻。
ゴア・ガジャからさらに南へ1km。ブドゥルゥ村にイエ・プル遺跡がある。イエはバリ語の普通語で水、プルは容器。つまり石の容器から湧き出る泉、という意味になる。豊富な水が流れる細い川沿いの道を降りていくと、やがて田圃の一方の崖側に見事なレリーフが現れてくる。このレリーフは14世紀のものでマジャパイト王国がバリを侵攻する以前のもの。つまり、ヒンドゥー教とは密接な関係はない。この遺跡はウブドの行政長官によって1925年に発見され、以降、彫刻的な価値もさることながら観光資源としても注目されるようになった。牧歌的な一面をもつこのレリーフが一体何を意味するか定説はないが、ジャワ生まれの画家で詩人、作家のマディ・クルトネゴロが、高さ約2m、長さ25mにわたって彫られた物語を解釈している。バリで最も古く、芸術的価値の高いこのレリーフの彼の解釈は面白い。概略をお話しておこう。
「村の若者が右手を挙げて丘の向こうの大木に何かを語りかけている。すると人影が現れる。その人はトアック(椰子酒)売りだ。売り子の声で美しい娘が家の前に出てきた。彼女は村の人々が狩りに出かけるのを売り子から聞く。彼女のそばに住んでいる老婆も出てきた。狩りが終わると独身の男女は結ばれるのだ。農夫が帰ってきた。そしてすぐに仲間とともに狩りに出る。猿が3匹、蛇を捕まえて遊んでいる。
村の入口には大きなジャガ・デサの神像が鎮座している。村を悪霊から守っているのだ。
さぁ、いよいよ狩りが始まった。馬で追うもの、徒歩で剣を振り上げて追うもの。野豚を追ってきた男は豚の口の中へ手を入れ舌をしっかりと掴んでいる。その豚の尻尾を引っ張っている男もいる。その背後ではカエルと蛇も戦っている。狩りはついに終わった。5頭の豚を捕獲して村に帰る。馬上を行く狩りの長はかっこよく、娘は恋をした。話しかけても振り向いてもくれない。ついに彼女は馬の尻尾を引っ張って男を留めようとした」
これがクロトネゴロの解釈した物語のエッセンスである。これを頭に入れておいてイエ・プルを訪れるともっと想像力が働き、物語が面白くなっていくことだろう。
アジアアシストネットワーク
寺村重喜
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